大学で「心理学基礎実験(通年2単位)」を履修した方は読まなくて良いです。
ここでは、心理学論文の書き方に触れておく。
心理学の論文の体裁は「アブストラクト」「目的」「経緯」「研究方法」「被検体(被検者)」「結果」「考察(ディスカッション)」「結論」の順で書いていく。「アブストラクト」とは「研究のまとめ」のことで一目で見てわかる実験の目的・結果・結論の要旨のことである。
「目的」ではこの研究で何を追究するのかを書く。たとえば「(最初に見た時計の秒針の1秒が他の秒より長く感じられる)初頭秒効果の研究」を例に取れば、「なぜ物理的には同じ長さの1秒なのに時計に目をやった瞬間の1秒だけが長く感じられるのかを明らかにするために本研究を行った」などとなる。
「経緯」は、過去のその主題にまつわる研究をレビューして、「なぜその研究を行うのか」・「心理学研究の中でのその意義」を書く。
「方法」においては先の例で述べれば、「実験者が多数の被検者に同時に3針式の電波時計を持たせ、実験者は秒針が変わるジャストのタイミングで「ハイ!」と声をかけ被検者らに数秒間秒針を見てもらう。そしてその数秒間が過ぎた後に、「最初の一秒が最も長く感じたひと」と問い挙手してもらう。そして実験者は挙手した人数を数え上げる。そしてその後の数秒に対しても同様に挙手してもらい人数を数え上げる」と言ったように実験方法を記述する。確かにその研究でその効果を捉えているのかを確認するためにその効果をみる目的でその実験で見る変数以外(たとえば知能)はまったく同じ統制群を設定する場合には、それにも言及する。
「被検体(者)」は実験・研究の対象を書く。たとえば「生後30日~35日の実験的にナイーヴなアルビノラット20匹」、「男女100名ずつの学部学生」などとする。ここでは適切に実験被検体(者)が公平に選ばれていることをチェックできるよう記述する。
「結果」では実験・研究の結果をわかりやすく報告する。表や統計的検定結果もここで報告する。上記の例でカイ二乗検定(後節で説明)で有意に初頭秒の挙手率が高かったとする。その場合「x%水準で初頭秒の挙手率が有意に高かった」などと記述する。
「考察(ディスカッション)」では特異な効果や現象の原因、主張したい仮説とそれへの結果の適否、否とすれば他の考えられる可能性などを論ずる。上記の例では「視覚的順応過程が主観的時間の長さを生み出しているものと考えられる」などと記述する。実際には「結果と考察」はイメージを膨らませて様々に肉付けする。
「結論」において採択した仮説、自分の仮説との合否などを書き、論文を締めくくる。
最後にすべてをまとめ、「アブストラクト」とし、冒頭へ移動する。論文の末尾に引用した参考文献を記す。
これで一応の論文の書き方については述べた。