講座 心理学概論 3 心理学史 6 中世の終焉とイタリア・ルネッサンス

 黒死病の流行によって人口の半分を1400年には失ったヨーロッパであったが、キリスト教会はオッカムの哲学を公式の教義としてその存続を図ろうとしたけれども、1517年に始まった宗教改革でルターは99箇条のテーゼを教会に突きつけ、アウグスティヌス的思想に味方した。紆余曲折を経てルターの立場、すなわちプロテスタンティズムが勝利した。  

 イタリア・ルネッサンスの始まりはペトラルカに始まると言って良い。彼はギリシア古典学、教育学、歴史学の分野でも活躍した詩人である。この時代にはシェークスピアやダ・ヴィンチやマキャベェリなどの芸術家、政治家が輩出した。しかし、哲学的には新しいものは何も産み出されていない。  

 この時代の特質は、一言で言えばギリシア回帰と呼ぶのがふさわしいであろう。ギリシア古典文献の翻読が盛んに行われ、この特質をついた言葉が「ルネッサンス」なのである。  

 イタリア・ルネッサンスを特質づけるもうひとつの傾向は、「ヒューマニズム」であった。神を捨てたわけではなかったけれども、神中心の世界観から人間中心の世界観にひとびとの考えは変化した。  

 それでも見るべき成果としては、ダ・ヴィンチが人間の身体を機械と見、人間や動物の構造について研究し、コペルニクスの影響を受けた学者の中のひとり、ブルーノは、我々の暮らす太陽系の他にも似たようなものがいくつもあり、そこには我々のような存在がいるのではないかと考えたことや、ベーコンが神学を捨て、完全な自然主義的・機械論的視点から自然を研究すべきであり、その方法は帰納法であるとして研究を行ったことにより経験論哲学を誕生させモンテーニュなどの後続を得た、など見過ごすべきではない事例の存在を2、3見ることができる。  

 ただし、イタリア・ルネッサンスの学者の多くはソフィストであって(正確に言えば神の観念から呪縛を受けたソフィスト)、ギリシアの「人間は万物の尺度である」と言う考えのもと人間に関心があるソフィストたちだったに過ぎない。  

 その間哲学は、オッカムからデカルトまで、長い空白期間にさらされた。デカルトの生まれた1590年にはゴクレニウスよって「人間学的心理学」が刊行されている。

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