「自閉症」の問題圏

 
 「自閉症」は一般に「対人関係のぎこちなさ」をその主訴とする。

 多くの心理学者は自閉症の原因を「脳の問題」であるが、脳の何が問題であるのかは不明である、と考えている。

 筆者は人間の対人認識と言うものが、他の動物と同様、認知と感情がセットとなってはたらく結果だと見ている。要するに、遺伝的には認知と感情は区別されることなく組み込まれている、と考えている。

 これが何らかの理由で機能不全になった結果が、「自閉症」と言う診断になるのだと思う。したがって、すべての自閉症が遺伝的とは言い切れないかも知れない。

 しかし、もし心理学者の多くが自閉症を「脳の障害」だと言っている前提に立つならば、筆者はその原因解明には、思ったほどの労力をかけずにできてしまうのではないか、と提言させていただきたい。

 もし自閉症が認知機能の問題だとするならば、それは哲学で言う「即自」よりは「対自」認知の問題であろう。だとするならば、その錬成としての「自己概念」の発達に顕著な影を落としているはずである。

 しかし、そこに問題の所在を見つけられなかったとすると、可能性のある認識は、「感情受容(共感性)の障害」一択に絞られてくる。これをみるのには、養育者の感情表出に対する自閉症児の応答性を見ていれば良い。

 しかし、自閉症の症状は多彩なので、個別具体のケースごとに原因を想定しなければならない事態も視野に入れておかねばならない。

 その場合、「環境の欠損(栄養、対人関係の狭さ、そのあり方のゆがみなど)」と言う非遺伝的な要因も含めて、「自己概念」に問題はないか、他者(養育者)の感情受容に問題はないか、と言う3つの視点から自閉症を見て行く必要があるように思われる。

 いずれであるにしても、大勢としてか個別具体としてか、自閉症の原因究明についてのポイントについて述べてみた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です