昔、とある藩のお殿様が家臣たちに言いました、「わしの評判を落としてくれ」と。
家臣たちはお殿様が考えていることをいぶかりながら、言いつけ通り民たちに殿様の悪い噂を競って流しました。
やがてあるひとりの家臣が殿様泣かせの面白いことをして民たちのなかで評判の良い噂話が流れ始めました。民たちはその家臣に競って兵糧を出したのでした。
相変わらず殿様の評判は良くはなかったのに、殿様はそれを喜びました。なぜか。
誰も知らなかったのだけれども、その家臣は殿様の腹心で、民たちが貢いだ兵糧を密かにその手中にしていたからなのでした。