超短編創作童話「本当の美」

 地球の彼方から異星人がやってきました。私たちと違って、彼らにとっての音楽における美の源泉は「音感のいびつさ」なんだそうです。  

 で、私たち地球人にとって歌唱力の素晴らしい歌手と音痴な凡人の歌を異星人に品評してもらった結果、異星人たちにはこぞって音痴な凡人の方が素晴らしい、と評価されました。  

 地球人には理解しがたいのかも知れませんが、異星人曰く、「音感がいびつな音痴のひとの方が露骨な音のコントラストしか感じられず、その感覚に沿った歌を思い付きやすいので、楽譜も楽器もいらない一度聴いただけで記憶に残る名旋律ができる」のだそうです。  

 いったい、人間にとっての「美」とか「素晴らしさ」と言うのは「技」なのか「心に残ること」なのか「感動すること」なのか。  

 いずれにしても、どうやら私たちには、まだ「神様にとっての美」を感じられる耳がないらしいのです。

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