講座 心理学概論 4 感覚心理学 1 精神物理学

 ドイツにおいて1834年、ウェーバーによって刺激強度がどれくらい違えばたとえば重さのような感覚が区別できるかについての最初の重要な法則が発見された。それは、たとえば100グラムの重りと102グラムの重りがギリギリ区別できるならば、200グラムの重りと204グラムの重りでないと重さを区別できない、すなわち重さの区別は比率が一定にギリギリ区別できる、という法則であった。彼は区別という言葉の代わりに「弁別」と言う言葉を使って、区別できるギリギリの値を「弁別閾」と称した。  

 1860年、フェヒナーは「精神物理学要綱」という書物を著して刺激の物理的強度と精神的強度の関係にかんする、いわゆる「フェヒナーの法則」を発表した。精神が感じる刺激の強度は、物理的強度のべき乗(フェヒナーの場合、正確には対数)に感覚固有の定数をかけて示すことができる、と言う法則がそこには発表されていた。さらに、刺激を感知できるギリギリの物理学的値を「絶対閾」と呼び、その研究についても記していた。  

 フェヒナーは野心家だった。彼の構想では、物理的世界と精神的世界の関係にかんする学問である「外的精神物理学」と生理学的世界と精神的世界の関係にかんする学問である「内的精神物理学」を追求すべきであり、精神物理学の本質は内的精神物理学の完成にあると考えていた。現在でも未だ不明な部分の多い内的精神物理学の完成こそが彼のライフワークになるはずだった。しかし彼のこのような構想は、後世の心理学者・生理学者たちに委ねられることとなった。  

 正確に言うと、感覚のべき乗法則は、スティーヴンスによって完成された。彼は類い希なる数学的才能を持っていた。彼の心理統計の発展に尽力した部分は極めて大きい。心理統計の名義尺度・序数尺度・間隔尺度・比尺度の分類は彼の手によるものである。彼の精神物理学への評価は高く、「精神物理学は数学に似て、応用的分野で有用なものになるだろう。政治・産業においても不可欠のものになるだろう」と語り、精神物理学の厳密科学化に尽力したことは特筆されねばならない。

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