講座 心理学概論 2 心理学研究法 20 一事例の実験デザインとアナログ研究

 臨床心理学における症例研究においては、行動の一回性や症状のユニークネス、同一症例のグルーピングが困難なために、単一事例に対して実験的処遇を加える方法が多用される。  

 単一事例の実験デザインには、以下のものがある。  

 ABABデザイン・・・何も処遇しない状態のときのことをベースライン期(A)と言い、介入要因 を導入した時期を処遇期(B)という。Bが効果を持っているかを見るためにABABの順で期間を設定する。Bが効果を確かに持っているならば、いずれのBでも改善傾向を示すはずである。  

 多層ベースラインデザイン・・・ベースラインを同時期に複数開始し、介入を時期をずらして導入する。複数の介入場面や複数のターゲット行動、複数の対象者を対象として、たとえば複数の介入場面を例に取ると場面1と場面2における介入がベースライン期に比べて場面1で効果があった介入を場面2でも効果があるかを見るために介入を実施する。行動が改善したら、ベースライン期に戻さないのが特徴である。  

 治療交代デザイン・・・ベースラインを測定した後、複数の介入要因を時系列的に相殺するようにそれぞれ導入し、より治療効果が高かった介入を採用し、導入する。  

 アナログ研究とは、正常と異常を正常者を「正常者群」「非正常者群」に分けて研究する方法である。正常者内の「正常者」「非正常者群」に分けて研究し、実際の「正常者」「異常者」の趨勢を類推することから「アナログ研究」という。アナログ研究は実際の「正常者」「異常者」では倫理的に許されない研究などに用いられる。限界として、アナログ研究で得た知見をどこまで一般化できるかなどがある。

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