講座 心理学概論 2 心理学研究法 16 調査法・検査法

 心理学における調査法は、たとえば「酒を飲むか」「飲まないか」について計数を取るだけの単純な調査から「自分について」のように系統立った詳細な質問が含まれるアンケートまで様々である。回答の仕方によって多数の選択肢の中から1つの項目を選ぶ単一回答法(多肢選択法:該当する段階にマークするような方法=評定尺度法を含む)、複数回答法のように多数の項目の中から当てはまる複数の項目を選ぶ方法、自由回答法のように、質問文に対して自由記述をもとめる方法まで様々ある。データは面接、郵送、電話、集合(多数の被調査者に1箇所に集まってもらう)、インターネットなどの各方法から得られる。どの方法も一長一短あり、調査者はそのことへの配慮が要求される。結果はそれにふさわしい統計分析にかけ、分析する。  

 調査には曖昧・難解な質問文を使わないこと、ダブル・バレル質問(一つの項目で2つ以上の質問を行う場合の質問)やキャリーオーバー質問(前の項目への質問が後の項目への回答に影響するような質問)を避けねばならない。そのためダブル・バレル質問は分解して2つの質問に、キャリーオーバー質問は質問の順序を入れ替えたりして効果を相殺するのが望ましい。  

 検査法は、すでに充分な信頼性と妥当性が確立している(たいていの心理テストはマニュアルにそれらが記してある)、ないしはよく用いられる心理テストを用いて被検者を検査する。検査法には質問紙法・作業検査法・投影法などがあるが、これもそれぞれに一長一短がある。質問紙法は信頼性・妥当性それぞれが高いのが長所であるが、被験者の回答の偏りを見抜きにくい。そのためライ・スケール(虚偽回答尺度)の備わっている検査も数多くある。作業検査法は、疲れ方のパターンの解析には有効であるが、性格検査としての妥当性に疑義がある。投影法は信頼性・妥当性ともに低く、解釈者の主観に偏る傾向がある。投影法の代表格にロールシャッハテストがあるが、信頼性と妥当性を高めるためにコンピューターを用いたエクスナー法が有力視されつつある。できるだけ信頼性と妥当性を担保するために、形式の違う性格・知能検査を組み合わせて診断基準の正確を期すために、テストバッテリー(検査の組み合わせ)を組んで被検者を検査するのが現在では一般的である。なおこの話題は「心理テスト論」の章で詳しく触れるので、ここでは簡略を期して記述した。

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