講座 心理学概論 2 心理学研究法 15 実験法

 心理学における実験では、ある処遇を与えられた実験群と、基本的にある処遇を与えられない統制群を設定して、実験群と統制群のあいだで関心のある結果に差が見られるか否かを見極める。実験群でも統制群でもランダムに被検体(者)を抽出し、実験で施す処遇以外はすべて同質なグループを作って、それらに対して実験を行う。実験で確かめるのは因果関係であり、単なる相関ではない。そのため、因果関係がないと期待される統制群(帰無仮説群に当たる)と因果関係が期待されている実験群(対立仮説群に当たる)の差の検定を行って、実験的処遇の効果を見るのである。  

 ところで例えば、向精神薬の効果を見るために実験をしたいとする。実験群では実際に向精神薬を与えるとすると、「投薬の効果」という剰余変数を統制しなければならない。そこで、統制群には、向精神薬だと偽って偽薬(たとえば単なる糖錠)を与える必要がある。このように、厳密に言えば「統制群」は必ずしも何の処遇を受けないわけではなく、形式的な中性刺激を与えられる場合がある。フリーマン・ウェリングトン・ブレスにおける研究では罪悪感と応諾性の関係をみるために、実験群では一つの足が5センチ短い不安定な机の上にインデックスカードが置かれ、被検者が机にもたれるとそれらが崩れ落ちるような条件を与えられ、統制群では机は不安定ではなく実験者が机にぶつかってインデックスカードを崩すように設定された。この実験でも「インデックスカードを崩すのが実験者か被験者か」と言う違いがあり、統制群が無処遇ではないことが分かる。  

 すでに分散分析の表題に出てきたように、実験には被検者内計画と被検者間計画がある。被検者内計画においては条件のすべてを被検者が体験するので、条件が増えるほど被検者の負担が大きい。被検者間計画では条件ごとに被検者が違うため、被検者の負担が小さくて済む。他に被検者内計画と被検者間計画を組み合わせた混合計画がある。

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