講座 心理学概論 1 神経心理学 2 聴覚の神経生理

 人間の耳には外耳・中耳・内耳がある。中耳には鼓膜・耳小骨(つち骨・あぶみ骨・きぬた骨)があり、内耳には蝸牛がある。外耳の耳介では音のスペクトルを変形し音源特定に重要な働きをする。蝸牛に伝わった振動は蝸牛内のリンパ液を振動させ。蝸牛内の中央階・鼓室階の基底膜にはリンパ液の振動に合わせて膨らみができ、蝸牛の起始点に近い方は高い周波数の音に、蝸牛先端に近い方は低い周波数で膨らみが大きい。基底膜のコルチ器にはその先端に硬い毛の生えた有毛細胞があり、その中心から1列の内有毛細胞。外側3列が外有毛細胞であり、主に内有毛細胞が聴神経につながっている。基底膜の振動によって有毛細胞が折れ曲がり電位変化が生じ、聴神経にインパルスを生じる。聴神経の周波数選択・感度は非常に鋭く、聴神経の外有毛細胞は肯定的フィードバックをするので、相対的に小さな音ほど大きく感じる。蝸牛の内有毛細胞に由来する信号は、聴神経を通って脳幹に入り、側頭葉の蝸牛神経核に投射する。蝸牛神経核の前腹側核ニューロンは聴神経に近い反応をする。背側核のニューロンは隣接周波数の抑制など、機能はより複雑である。そこには周波数が変化する音や広帯域の音に反応するニューロンなどもみられ、すでにこの段階で音のスペクトルの分析が始まっていることになる。蝸牛神経核の前・後腹側膜は外側毛様体に連絡しつつ下丘に投射し、外・内側オリーブ核を経由して下丘に投射する経路もある。外側上オリーブ核のニューロンは高周波音の両耳間時間差と強度差に応答する。内側オリーブ核では低周波音の両耳間時間差に応答し、すでにこの段階で音の空間位置にかんする情報を処理していることになる。下丘には上記の他に内・外側オリーブ核からの信号も投射し、下丘では蝸牛神経核背側核からのスペクトル特徴と外・内側オリーブ核からの空間情報が統合するといわれている。それは視床にある内側膝状体を経て、聴覚領へと投射する。特に腹側部は聴覚皮質の第一次聴覚領に投射する。背側部と内側部では視覚や体性感覚の入力も受け第一次視覚領を中心とする聴覚皮質の帯状領域に投射する。第一次聴覚領を含む聴覚皮質は注意・短期記憶・作業記憶に関係する。外側膝状体の内側部は扁桃体とも連絡があり、情動と音を関係づけると考えられている。また、内外上オリーブから両側蝸牛へはオリーブ蝸牛束が連絡していて、カクテルパーティー効果・蝸牛の自動的制御・選択的注意などに関係しているのではないか、とも言われている。

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