講座 心理学概論 1 神経心理学 1 視覚の神経生理

 人間の眼には、約1億個の視神経細胞が網膜上に存在する。網膜の中心渦には色受容を担うS・M・L錐体が密に存在しており、視野中心から約5度のところには明暗を受容する桿体が密生している。レンズに当たる水晶体は虹彩および毛様体筋によってその厚みを変え、網膜に適度の反射率で環境像を結像する。水晶体より表面には角膜・結膜が存在し水晶体と角膜の間には前眼房・後眼房があり光を通過させる。視神経は約100~120万本眼の後ろ側から出ており、1億個の視細胞の情報を100分の1に圧縮する。そしてその情報は視神経半交差(耳側の視神経は同側に、鼻側の視神経は反側に向かう)を経て視索に到達し視床-外側膝状体に投射する。ここから後頭葉にある大脳皮質第一次視覚野に投射する視覚伝導路を膝状体-有線皮質投射系と言い、視蓋前域・上丘に投射するそれを膝状体外系という。前者は色覚・視力・運動視・形態視といった意識に上る視覚機能を担っており、後者は瞳孔反射・眼球運動調節など意識下の視覚調節機能に関係する。外側膝状体には大細胞層と小細胞層があり大細胞層が損傷を受けると運動視が障害を受け、小細胞層が損傷を受けると視力・色覚が障害を受けることが実証されている。これより先、第一次視覚野で局所運動を処理する最初の段階が、第二次視覚野背側部を経て第三次視覚野、MT(Middle Temporal Area)では局所運動を統合し、全体運動として知覚するという第二段階が存在する。その前段階であるMST(Middle Superior Temporal Area)では方向選択性の運動情報が処理されていると考えられている。なお、第一次視覚野からMT・MSTまでの細胞は規則正しく配列されいることが最近の研究から明らかになっている。これは視覚の背側経路であり、腹側経路においては第四次視覚野、下側頭葉視覚連合野へと投射しており、こちらでは物体の形態知覚がなされていると考えられている。また、奥行き知覚は第二次視覚野で成立すると考えられており、この部分に経頭蓋磁気刺激を与えると、実際に奥行き知覚が消失する。

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