講座 心理学概論 5 学習心理学 3 道具的条件付け その発祥と流れ

 我々は常々、何かを得るために行動し、その行動をルーティーン化して何かを得ることを日常とすることも多い。今節ではそのようなタイプの学習、すなわち「道具的条件付け」について述べる。    

 1898年、エドワード・ソーンダイクはその学位論文の中で「問題箱」を使った実験を報告した。「問題箱」とは、牢獄のような箱の中に一本のプランジャーが吊ってあり、これを何かの拍子で引くと箱の出口が開き、箱から脱出できる装置のことである。彼はその中に空腹のネコを入れ、箱から出られると餌を与えられるようにしてこの学習の進展を箱に入れてから出られるようになるまでの時間(これを「反応潜時」という)的変化を記録した。はじめのうちはネコは脱出までにかなりの時間を要していたが、試行を重ねるうちに徐々に潜時は小さくなっていくことが確認された。彼はそこから学習には発見とか洞察と言ったものは不要であって、ただ学習は機械的に進むのだ、と結論づけた。  

 1930年頃、「問題箱」が一回一回の離散試行だったのに対して、連続試行可能な装置、すなわち「スキナー箱」をバラス・スキナーが考案し、その装置は瞬く間に世界中の心理学実験室に配備されるようになった。この場合の被験体はハト、ラットである。装置の中のレバーを押すかペッキングするかによって、餌が箱の中に出てくる装置である。スキナーは様々な強化刺激の呈示法を考案した。ひたすら反応があるごとに強化(餌の呈示)を与えるスケジュールを「連続強化スケジュール」、一部の反応、時間ごとに強化を与えるスケジュールを「間歇強化スケジュール」と呼ぶ。後者にはいろいろな種類のスケジュールが考案されている。まず、報酬の与え方が一定数の反応後にある固定比率強化(Fixed Ratio Schedule:以下FRと略)、一定の時間後にある固定間隔強化(Fixed Interval Schedulu:以下FIと略)、様々な回数後に強化が行われ、総体としてみれば強化率の平均値が一定の変動比率強化(Variable Ratio Schedule:以下VRと略)、様々な間隔ごとに強化が行われ、総体としてみれば強化間隔の平均値は一定であるような変動間隔強化(Variable Interval Schedule:以下VIと略)、などがある。それぞれのスケジュールが考案された背景には、行動は強化されないほど消去しにくい(これを「部分強化効果」と言う)ということが分かっているためである。一般にVR、FR、VI、FIの順に強化されやすい。強化スケジュールは複合して用いられることも多い。スケジュールのあとに報酬の代わりにスケジュールを呈示し、前後のスケジュール間で弁別刺激が異なるものを連鎖スケジュール、同一なものを結合スケジュールと呼び、2つのスケジュールを交代で用いる場合に弁別刺激が異なるものを多元強化スケジュール、同一な場合を混合強化スケジュールと呼ぶ。また2つの操作体を同時に呈示し、操作体ごとに異なるスケジュールで強化することを並立強化スケジュール、このようなスケジュールを適用する際に強化刺激の代わりに強化スケジュールを呈示するスケジュールのことを並立連鎖スケジュールと言う。  

 道具的条件付けとは「報酬を得るために特定の方法(オペラント)を使って、これを満足させる学習」と言うことができるが、「潜在学習」等の事実から古典的条件付けと同じく、表面上反応が見られなくなったからと言って学習自体が消えてなくなる訳ではないことが明らかにされている。

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