心理学が科学だと言うことへの疑念

 ヴィルヘルム・ヴント以降の心理学は「科学」だと言う。これから「そうかも知れないけど…」的なお話をします。

 心理学における実験デザインの典型的な例は、他の条件が皆同じで(ceteris paribus)ひとつの変数だけが違う場合に、そのひとつの条件が結果に差を与えているのかどうか、のような場合です。

 心理学科で学ばれた方は一度は聴いたことがあると思います、「実験とは因果関係を確かめるものである」と言うことを。

 しかしたとえば、大食をする子と小食な子の体重には違いが見られるか、と言うような問題を考えてみてください。

 もし差が見られたとして、これは「大食か小食か」だけの問題でしょうか?

 もしかしたら、大食と小食を分けるものが食物分解酵素のはたらきだったら、あるいは代謝の活発さだったら、「大食か小食か」が「原因」と言うよりは、単なる「側面変数」に過ぎない、ということになりはしないでしょうか?

 あるいは、「体調が良くなる」と謳われたサプリの効能は、サプリそのものではなく、サプリを飲むことを意識したために「規則正しい食生活」になったためかも知れません。

 こう言う疑問を抱かせるような心理学研究は数限りなくあります。と言うよりかなりの心理学研究がそのようなピンボケに陥っています。

 「科学科学」と偉そうに言っても、本質を突いていないのに騒ぐのは少しどうかしているのではないのかな、と思う次第です。

 僕は思います。変数間の関係について正確な見通しを与えるものは、結局人間の直観や洞察なんだ、と。

 手続きが科学的だからと言って、ものごとの本質を突いている保証などないと言うべきではないでしょうか。我々は「科学」を盲信するのはひととしてどうか、と思う次第です。

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