昔、あるスズメの子のなかに、さえずることができない鳥がおりました。
他の鳥たちは皆、さえずりをすることでお互い助け合って生きておりました。
なので、さえずることができないその子は、いつも仲間であるはずのスズメたちからからかわれたりいじめられたりしておりました。
そのスズメの子は思ったのでした。「自分みたいな醜いアヒルの子は産まれてこなければ良かったんだ!!」。そして夜な夜な目には見えない涙を流し続けました。
ある日、そのスズメの子が起きたときに、「何か大事なものは、どこにあるのかが分かると良いのに…」とふと思い、あたりを見渡すと、昨夜の嵐で飛び散った木の枝が散乱していました。
鳴かないスズメの子は、「そうだ!!」と突然何かに気付いたように、自分にとって大事なものがある方角にそれらの木の枝の先っちょを向けて並べることを思い付きました。
大事なもの、それは食べるものがたくさんある方角だったり、天敵に狙われると逃げるべき方向だったり、嵐の夜に風雨から身を守れる場所だったり、仲間がいる方角だったり、それはそれはさまざまなことでした。
その子はその習慣を身につけたおかげで、他の仲間たちよりもはるかに長生きできたのでした。
何かが欠けていることが、必ずしも生きる上では問題ではなかったのです。
おしまい。