ひとびとは限りある人生を生きているうちに、「永遠に死なないいのち」に憧れていました。
そこで偉い学者さんが、どんな環境にも姿形を変えることで永久に生きられる生き物と言うものがこの世にいないか、と言うテーマで研究を始めました。
それを天から眺めていた神様が、その偉い学者さんにすべてを司る力を与えてみたのでした。
偉い学者さんは実際に世界をそのようにしてみて、3つのことが分かった、と神様に心の中でつぶやいたのでした。
ひとつは、いのちに限りがなくなると、ひとびとはあらゆる感情を失って、虚しい永遠のいのちを生き続けなければならなくなってしまった、と言うことでした。
ふたつめは、生きることしかなくなった永遠のいのちは、それをよいことに永遠の心の戦を生き続けるしかなくなった、と言うことでした。
最後に、永久に生き続けるいのちがこの世の大多数を占めるようになると、神様が与えた自然の中では一時は良いにせよ、いずれ偏りが生じて自然自体が成り立たなくなり、永遠に生きられるはずだった理想のいのちたちはその万能性のせいで滅亡してしまった、と言うことなのでした。
それで偉い学者さんは悟ったのでした。「いのちというものは自然を相手にしてけんかを売るようなもので、いのちのかたちは理に適うように限られている」と。
神様がいのちを永遠にしなかったのには、そんなわけがあったのでした。
おしまい。