講座 心理学概論 1 神経心理学 9 刺激・興奮の伝導

 刺激を伝達する神経細胞をシナプスと呼ぶ。シナプスは電気シナプスと化学シナプスに大別できる。  

 電気シナプスは細胞壁同士が六角格子状のタンパク集合体(コネクソン)でつながれ、2nmほどしか間隙のないギャップ・ジャンクションという構造により細胞内イオンなどの通流を許す構造からなっている。  

 化学シナプスは、ニューロンの樹状突起から伸びている神経終末にあるスパインと他のニューロンの終末ボタンが20nmほどの間隙をもって接し合い、終末ボタンにあるシナプス小胞から神経伝達物質を放出することによって、刺激を伝達する構造になっている。神経細胞の細胞膜は約-70mVに分極しているが、ある閾値を超えたプラス荷電が加わるとナトリウムイオンが細胞外から細胞内に急速に流入(オーバーシュート)し、膜の興奮すなわち脱分極が起こる。脱分極が起こると今度は電位依存性のカリウムチャネルが開き、カリウムイオンが細胞内から細胞外に流出し、静止膜電位に戻る(アンダーシュート)。この変化は、周囲の細胞にも同様の変化を引き起こし(不減衰伝導)、興奮-非興奮の2値のうちいずれかしか取らないことから「全か無かの法則」と呼ばれる。このような電位変化のことを活動電位と呼ぶ。神経繊維のまとまりのことを軸索という。中枢性のある種の細胞ではオリゴデンドロサイトが、末梢性のある種の細胞ではシュワン細胞が巻き付き、髄鞘を形成していてその継ぎ目をランビエノードという。髄鞘は絶縁性が高いため、その外側、つまりランビエノードの無髄部分の膜を興奮(跳躍伝導)させるため、髄鞘化神経繊維の興奮は非常に速いスピードで神経終末まで伝えられる。終末まで興奮が伝えられると、電位依存性カルシウムチャネルが開き、カルシウムイオンの流入が起こり、これが信号となってシナプス小胞の膜が細胞膜に融合し、小胞内の神経伝達物質が細胞外に放出される。  

 これらが、刺激・興奮のおおまかな伝導機制である。

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