では、シナプス小胞から放出される神経伝達物質(ニューロトランスミッター)にはどのようなものがあるのだろうか。
代表的なものに限って挙げると、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸(GABA)、セロトニンなどが挙げられる。神経伝達物質を分子構造から見ると、アミノ酸、アミン、ペプチド(アミノ酸が連なっているもの)に大別できる。
アミノ酸の神経伝達物質の代表格はグルタミン酸とGABAであり、前者は興奮性、後者は抑制性のシナプスを形成する。
アミンの代表格はアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、セロトニンなどである。ノルエピネフリン、エピネフリンは、商品名をノルアドレナリン、アドレナリンというが最近では区別なしに使われている。アセチルコリンは副交感神経および運動神経の、ドーパミンは報酬系の、ノルエピネフリン/エピネフリンは副交感/交感神経の、セロトニンは覚醒のそれぞれ機能にかかわっていることがわかっている。
ペプチドにはソマトスタチン、コレシストキニン、エンケファリン、バソプレッシン、オキシトシン、オレキシンなどがある。バソプレッシンは尿生成の抑制や社会行動にかかわってい、オキシトシンは母親の乳汁の射出にかかわっていることが分かっている。そしてオキシトシン産生能のないオキシトシンノックアウト(*)ハタネズミの行動を調べたところ、他個体のニオイ認知のみに障害が出ることが分かった。
(*)遺伝子操作により特定の伝達物質、ホルモン、腺分泌物質の産生能を遺伝子操作により欠落させられた個体を「ノックアウト個体」と言う。たとえば統合失調症のような病態を示すマウスを「カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質リン酸化酵素Ⅱαヘテロノックアウトマウス」と言う。