講座 心理学概論 2 心理学研究法 16 調査法・検査法

 心理学における調査法は、たとえば「酒を飲むか」「飲まないか」について計数を取るだけの単純な調査から「自分について」のように系統立った詳細な質問が含まれるアンケートまで様々である。回答の仕方によって多数の選択肢の中から1つの項目を選ぶ単一回答法(多肢選択法:該当する段階にマークするような方法=評定尺度法を含む)、複数回答法のように多数の項目の中から当てはまる複数の項目を選ぶ方法、自由回答法のように、質問文に対して自由記述をもとめる方法まで様々ある。データは面接、郵送、電話、集合(多数の被調査者に1箇所に集まってもらう)、インターネットなどの各方法から得られる。どの方法も一長一短あり、調査者はそのことへの配慮が要求される。結果はそれにふさわしい統計分析にかけ、分析する。  

 調査には曖昧・難解な質問文を使わないこと、ダブル・バレル質問(一つの項目で2つ以上の質問を行う場合の質問)やキャリーオーバー質問(前の項目への質問が後の項目への回答に影響するような質問)を避けねばならない。そのためダブル・バレル質問は分解して2つの質問に、キャリーオーバー質問は質問の順序を入れ替えたりして効果を相殺するのが望ましい。  

 検査法は、すでに充分な信頼性と妥当性が確立している(たいていの心理テストはマニュアルにそれらが記してある)、ないしはよく用いられる心理テストを用いて被検者を検査する。検査法には質問紙法・作業検査法・投影法などがあるが、これもそれぞれに一長一短がある。質問紙法は信頼性・妥当性それぞれが高いのが長所であるが、被験者の回答の偏りを見抜きにくい。そのためライ・スケール(虚偽回答尺度)の備わっている検査も数多くある。作業検査法は、疲れ方のパターンの解析には有効であるが、性格検査としての妥当性に疑義がある。投影法は信頼性・妥当性ともに低く、解釈者の主観に偏る傾向がある。投影法の代表格にロールシャッハテストがあるが、信頼性と妥当性を高めるためにコンピューターを用いたエクスナー法が有力視されつつある。できるだけ信頼性と妥当性を担保するために、形式の違う性格・知能検査を組み合わせて診断基準の正確を期すために、テストバッテリー(検査の組み合わせ)を組んで被検者を検査するのが現在では一般的である。なおこの話題は「心理テスト論」の章で詳しく触れるので、ここでは簡略を期して記述した。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 15 実験法

 心理学における実験では、ある処遇を与えられた実験群と、基本的にある処遇を与えられない統制群を設定して、実験群と統制群のあいだで関心のある結果に差が見られるか否かを見極める。実験群でも統制群でもランダムに被検体(者)を抽出し、実験で施す処遇以外はすべて同質なグループを作って、それらに対して実験を行う。実験で確かめるのは因果関係であり、単なる相関ではない。そのため、因果関係がないと期待される統制群(帰無仮説群に当たる)と因果関係が期待されている実験群(対立仮説群に当たる)の差の検定を行って、実験的処遇の効果を見るのである。  

 ところで例えば、向精神薬の効果を見るために実験をしたいとする。実験群では実際に向精神薬を与えるとすると、「投薬の効果」という剰余変数を統制しなければならない。そこで、統制群には、向精神薬だと偽って偽薬(たとえば単なる糖錠)を与える必要がある。このように、厳密に言えば「統制群」は必ずしも何の処遇を受けないわけではなく、形式的な中性刺激を与えられる場合がある。フリーマン・ウェリングトン・ブレスにおける研究では罪悪感と応諾性の関係をみるために、実験群では一つの足が5センチ短い不安定な机の上にインデックスカードが置かれ、被検者が机にもたれるとそれらが崩れ落ちるような条件を与えられ、統制群では机は不安定ではなく実験者が机にぶつかってインデックスカードを崩すように設定された。この実験でも「インデックスカードを崩すのが実験者か被験者か」と言う違いがあり、統制群が無処遇ではないことが分かる。  

 すでに分散分析の表題に出てきたように、実験には被検者内計画と被検者間計画がある。被検者内計画においては条件のすべてを被検者が体験するので、条件が増えるほど被検者の負担が大きい。被検者間計画では条件ごとに被検者が違うため、被検者の負担が小さくて済む。他に被検者内計画と被検者間計画を組み合わせた混合計画がある。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 14 ここまでのまとめ

 因子分析以下、複雑な計算を要する統計分析については、(フォントの関係もあり)概念的な簡単な説明に止めた。それはこの文章が「心理学概論」であるということにも由来する。他にも情報量の確認、G-P分析、構造方程式モデリング、データマイニングなど、最近の心理統計学にしばしば顔を出す話題も犠牲にした。それはすべて本文が「心理学概論( An Introduction of Psychology )」であるゆえである。具体的に説明したのは差の検定、適合度の検定、相関係数ぐらいである。しかし、これらの知識があるとないとでは研究の動機付けが格段に異なるものと思う。数学的知識は中学校程度を想定した。心理学検定は年齢・性別にかかわりなく受検できる。中学生の方でも心理学検定は受けられるのである。中学生1級取得も夢ではない。とかく煩瑣になりがちな統計の説明に、大学レベルの数学の知識を持ち込むことは、上記の趣旨から言って有益でないと判断した。  

 これで心理学における統計の章は終わるが、心理学研究法は統計のみではない。些か節は多くなってしまうが、今しばらく「第2章 心理学研究法」にお付き合い願いたい。実際の研究がどのように行われているのかに我々はこののち直面する。「これだけ知っていれば実際に研究ができる」というところまでは第2章で辿り着きたい。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 13 その他の統計的分析

 以下の統計分析はSAS・SPSSで求めることができる。  

 紙幅の関係上、その他の統計的分析は、短い文章でまとめることとする。  

 テストを構成する項目を統計的に構成する方法を項目分析と呼ぶ。項目の困難度を「通過率」、識別力を「点双列相関係数」で表す。しかし、この方法では1つの項目得点がテスト全体の値に影響を与えるため、その適切性に疑義がある項目で満たされていないとまた最初から分析を始め直す必要があり、煩瑣であった。そのため最近では項目を独立に定義し通過率を評価する「項目反応理論」が台頭してきている。  

 相関係数に関係する分析として最小二乗法による単回帰分析がある。そこでは2変数の値をグラフに書いて最も当てはまりの良い回帰直線の式(一次方程式で表す)を求める。この手法を最小二乗法を用いて二つ以上のX(X1・X2・・・Xn:例 センター試験の国語と数学の成績)についてYの回帰式を求める手法を重回帰分析という。また、結果変数が名義尺度の場合にある標本がどのグループに属するかを統計的に決定する方法を判別分析という。判別分析は、独立変数が判別に影響しているかをみるためにも利用される。独立変数が複数の場合を重判別分析という。3つ以上の独立変数がある場合には「正準判別分析」という。次に主成分分析があるが、これは多くの変量を、できるだけ統計的損失なしに1つあるいは複数個の総合的指標で代表させる方法である。また、多次元尺度構成法は2つの変数の類似度を判断するさいの根拠を明らかにするための方法である。  

 質的変数しか与えられていないデータに何らかの合理的方法で数量を与え、そのデータの意味を探ることを(林式)数量化理論という。数量化Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ類は上記それぞれの重回帰分析・正準判別分析・主成分分析・多次元尺度構成法の質的方法版とも言うべきもので、抽象度の高い心的特性の客観的議論を可能にする重要な方法としてデータ構造の探索、新たな仮説の生成に威力を発揮する。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 12 信頼性と妥当性

 たとえばパーソナリティー検査・知能検査などには信頼性と妥当性が求められる。  

 信頼性とは同じ検査を複数回受けても検査得点に差が見られない度合いのことである。つまり、テスト得点をS、真値をT、誤差をEとして数式で表すと、S=T+Eとなるが、ここでEの値が最小になるようなテストが望ましい、ということである。信頼性を測る測度としては、測定の標準誤差(誤差の標準偏差)、信頼性指数(真値Tと測定値Sとの相関係数)、信頼性係数(得点Sの分散に占める真値Tの分散の割合)、信号雑音値(真値Tの分散と誤差Eの分散との比)などがあるが、信頼性係数を利用することが多い。信頼性係数の取り得る値は0~1であるが、一般に0.9以上であることが望ましい。同じ被検者に複数回テストを受けてもらうことはできない。そこで多数の被検者にテストを1回ないし2回受けてもらって信頼性の高さを推定しようとする。その方法には再テスト法(同一の被検者に2回テストを受けてもらう方法)、内部一貫性による方法(たとえば問題項目を偶数番と奇数番に折半して信頼性係数を推定する折半法(スピアマン-ブラウンの公式;信頼性係数ρ=2r/(1+r):クロンバックのα係数;α=(n/(n-1))×(1-(項目分散の和/合計点の分散))、代替テスト法(同一の構成概念を測定し、得点の平均、分散、信頼性が同値となる平行テストを用いて信頼性係数を推定する)などがある。  

 妥当性とは、測定したい内容を確かに測定している確度のことをいう。テスト項目がそのテストで測定しようとする領域の適切な標本となっているかを(複数の専門家などによって)表すのが内容的妥当性、たとえば精神疾患の診断あるいはすでに妥当性が確立しているような心理検査を外的基準として精神疾患テストとの関係の強さをみるような場合の妥当性を項目基準関連妥当性(外的基準がテストと同時に与えられるような場合には併存的妥当性、後に与えられるような場合を予測的妥当性という)といい、形式の異なる同一の構成概念を測っているテスト間の相関の高さに基づく妥当性を構成概念妥当性と言い、相関の高さを収束的妥当性、低さを弁別的妥当性という。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 11 ランダムサンプリング

 心理学的調査、実験などで重要なランダムサンプリング(無作為抽出)について述べる。  

 ある集団(母集団)からたまたまの確率で被検者を選ぶことをランダムサンプリングという。心理学の研究ではたとえば刺激の順序によってデータに偏りが出ることがある。これを「系列位置効果」と呼ぶ。他に成績の良い生徒だけをサンプルに取って一般化してしまう誤りや、大学生だけを被検者に選ぶことによって、結果を一般化する際に大学にいることによる独特の効果を無視してしまう誤りなどが考えられる。またある処遇を受けたひとを高い割合で被検者に選ぶとか、快く回答に応じた被調査者だけのデータから回答に応じなかったひとたちについても一般化してしまう問題、男女差を無視してしまう問題などが考えられる。  

 上記のような問題を回避するためには、系列位置効果が出ないようにするために、さまざまな順番で実験を行ったり、偏りのないデータを取るために被検者をたとえば謝礼を支払うことを条件に郵便番号1つにつき1人選んだりして、データの無作為化をはかることが重要である。このように無作為化した被検者について標本を取る実験を「実験」と呼び、そうでない実験を「準実験」と呼ぶ。  

 「実験」のなかで実験群と統制群を用いて因果関係を求めるような場合、このことはとても重要である。なぜなら、実験という処遇の効果を純粋に抽出しなければならないからである。  

 さらに実験に関しては次のような注意が必要である。独立変数(条件変数あるいは説明変数)と従属変数(結果変数あるいは目的変数)を設定したとしてもそれは見かけ上のことで、仲介変数が真の説明変数である場合がある。たとえば、統一算数テストなどでの算数の成績が身長を説明することがある。この場合仲介変数である年齢が真の独立変数であるような場合である。したがって、実験や調査をするさいにはなにが真の説明変数かを見極める必要がある。また、何を母集団として仮定するかによって、標本抽出が変わるので、そのことに対しても配慮が必要である。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 10 刺激の比較法

 心理学(精神物理学)で使用される刺激の比較法には調整法、極限法、恒常法、上下法、一対比較法、系列カテゴリー法がある。1つずつ取り上げて説明する。  

 調整法は知覚の閾値(50%の確率で刺激を検出できる刺激の強度)を数回、明らかに知覚できない値から被検者自身がはじめて知覚できるところまで上げていき求める方法である。  

 極限法は実験者が刺激を操作する点で調整法と異なり、明らかに知覚できる刺激強度から明らかに知覚できない刺激強度まで下げていく下降系列と、明らかに知覚できない刺激強度から明らかに知覚できる刺激強度まで上げて行く上昇系列を数回繰り返し、それらの平均から閾値を求める方法である。   

 恒常法は、閾値付近と実験者が推定した刺激強度を7つくらいあらかじめ決めておき、実験者が無作為にそれらの刺激を呈示し、刺激値下での知覚割合を直線で結んで記録しておき、知覚確率が50%の点を閾値として求める。  

 上下法では、実験者がたとえば明らかに知覚できない値から上昇系列で刺激強度を強くして、被検者がはじめて「知覚した」と報告したら下降系列に転じ、明らかに知覚できないと被検者が報告したらまた上昇系列に転じると言う操作を繰り返し、変化点の平均を閾値として求める。  

 一対比較法は、各刺激のうち2つを選び、どちらが優越するかを報告してもらう方法である。  

 系列カテゴリー法は各刺激について、「最も当てはまる-まぁ当てはまる-どちらとも言えない-あまり当てはまらない-全く当てはまらない」などの尺度を用意し各刺激強度について評価してもらう方法である。なお、この方法は質問紙検査などでも有効である。  

 ウェーバーは刺激の弁別閾の研究で50グラムと49グラムの変化を検出できるひとは100グラムでは98グラムで変化を検出できることを見出した。刺激の増分ΔS、比較基準刺激をSとして式で表せば、

       ΔS/S=一定

                                                                                                                                                                               

となる。  

 さらにフェヒナーは、ある刺激の存在自体を感知できる絶対閾と刺激強度間の異なりを感知できる弁別閾を区別し、刺激強度と知覚の関係にかんして、kを感覚毎の定数、Sを感覚の大きさ、Rを刺激の物理量としたとき、                

 S=klogR

の関係にあることを実証した。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 9 ノンパラメトリック検定

 これまでは背後(母集団)に2項分布や正規分布を仮定できる場合の検定法を紹介した。これらはパラメトリック検定と呼ばれる。しかし心理学のデータにはそれが仮定できないものがある。それらの検定をノンパラメトリック検定と言う。  

 すでに紹介したχ2検定は、母集団に特定の仮定を置いているから、パラメトリック検定である。これとは違ってノンパラメトリック検定としては符号検定、順位和検定(ズレの検定)、順位相関係数などがある。以下それぞれぞれについて述べる。  

 符号和検定では、各変数から中央値の期待値を引き、それらの符号を書き並べる。たとえば恋人への好意度が10点満点で、過去の充分大きなサンプルサイズの既知の中央値が6.5だったとする。 新しいデータ15人分が、   

7 8 8 7 9 6 7 8 7 6 7 3 8 9 7 だったとすると、符号は   

+ + + + + - + + + - + - + + + となる。2項分布の公式

 n         n!  

(  )  = ―――――――― ―――

 x       x!(n-x)!

 からn=15、p=0.5として     

 p(0+1+2+3) = .017

 よって、5%水準で新しいデータの中央値の方が高い、と言える。  

 次に順位和検定であるが、ある心理テストの「神経質さ」の得点が50点満点で、心理療法を受けた群(n=10;Tと表記)と、受けていない群(n=10)で以下の成績を示したとする。   

 心理療法あり(T) 25 21 30 31 28 25 30 29 25 20   

 心理療法なし(R) 37 29 25 36 42 38 28 35 40 36

 これを値の小さいものから並べる。なお「心理療法あり群」には(T)を添えてある。     

20(T) 21(T) 25 25(T) 25(T) 25(T) 28 28(T) 29 29(T) 30(T) 30(T) 31(T) 35 36 36 37 38 40 42   

 これらの値を順位に置き換える。   

1(T) 2(T) 3(T) 3(T) 3(T) 3 7(T) 7 9(T) 9 11(T) 11(T) 13(T) 14 15 15 17 18 19 20

 検定統計量R=((T)の値の総和)=1+2+3+3+3+7+9+11+11+13       =63

 Rの0.026の臨界値は79以下、よって「心理療法あり群」は5%水準で有意に「神経質さ」の得点が低い。順位和検定についてはこれで述べた。  

 さらに、順位相関係数では次のような問題を扱う。 数学と理科のテストで以下のような順位がついたとする。

  数学  5  8  6  1  9  4  7  2  10  3

 理科  4  9  7  1 10  5  8  3   6  2

 この場合の順位相関係数は次式で与えられる。          

     (Xi-Yi)の二乗の総和

r=1-(――――――――――――――― × 6)

        n(n二乗-1)

 この場合(Xi-Yi)の二乗の総和は24なので   

 r=1-((24×6)/800)    =1-0.18    =0.82 と高い相関があることが分かる。  

 ノンパラメトリック検定の代表例3つについて述べた。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 8 因子分析とSD法

 これまで見てきた心理学的統計検定の本質を要約すると、心理統計とは「変数の共変性の確認」だと言うことができる。  他の基礎的な心理統計の方法についてこの後は概説してゆくこととする。  

 「因子分析」とは、比較的少数の「因子」を数理的に共通のモーメント(重心の推定値)を抽出して、相関を分析する手法のことを言う。因子間行列から分散を最大にし、現象をよく説明する因子を抽出するのである。そのために各変数に最適な重み付けを与える。この重み付け係数のことを「因子負荷量」という。イメージして欲しいのが、分布が30点から100点までのテストと、分布が90点から100点までのテストを何も考えず単純に加算して「学力テスト」と銘をうつ誤りである。近年までは因子間に相関を認めない「バリマックス回転」という手法を用いて「直交解」を求めるのが主流であったが、最近ではある程度の因子間相関を認める「プロマックス回転」を用いて「斜交解」を求めるのが主流になっている。これらは共分散行列から計算される。心理学では質問紙検査を作成したり、イメージを分析したりすることに用いられることが多い。因子数であるが、1以上の固有値をスクリー基準によって決定する。因子分析には「探索的因子分析」と「確認的因子分析」がある。「探索的因子分析」では分析のはじめに最小二乗法や最尤法で初期解を求め解釈をし、2因子以上の解は各観測変数がができるだけ小数の因子から影響を受けている単純構造を探すため回転をする。「確認的因子分析」では、自由母数・制約母数・固定母数を指定し、因子間行列を求めることができるので、特定の理論的背景があるときには確認的因子行列をもちいる。これらは統計ソフトSASやSPSSなどで容易に求められる。  

 心理学で意味やイメージを研究する方法としてはオズグッドによるセマンティック・ディファレンシャル(=SD;意味微分)法が有名である。たとえば「怒り」という概念に、一対の反対の意味を持つ形容詞、たとえば「優しい-厳しい」、「良い-悪い」、「愛がある-愛がない」など10~20対の形容詞を7段階尺度で評定してもらい、因子分析を施して各尺度上の点を結びつけることでイメージ空間にプロフィールを作れるようにしたりする研究などがある。基本的に「評価」・「活動性」・「力量」からなる3次元意味空間に意味を定位することができる。が、研究によってはかなり違う次元を抽出することもある。

講座 心理学概論 2 心理学研究法 7 3つ以上の変数の差の検定・・・分散分析(2要因被検者内計画

 先の節でも述べたが、分散分析を流れる基本的な数理的根拠は「分散の大きい平均値ほど平均値としての意味は弱い」と言うことである。それを念頭にこの節も読んでいただきたい。  

 被検者それぞれがすべての条件について反応を求められるような調査・実験計画のことを「被検者内計画」と呼ぶ。このとき設定される条件のことを「要因」という。ここでは要因1が2水準、要因2が3水準であるような「2×3被検者内計画」の分散分析について述べる。  

 

 例:5人の被検者に酒の銘柄「安東水軍」「剣菱」2銘柄について「冷や」「常温」「熱燗」3条件で美味しい順に10点から1点までの点数で評価してもらった。このデータについて5%水準で分散分析を行いなさい。           

条件      「安東水軍」

被験者  加藤  井上  芝崎  田中  石田

「冷や」  5   6   4   6   7

「常温」  6   6   6   7   7

「熱燗」  9   7   8   8   9

 

条件       「剣菱」

被験者  加藤  井上  芝崎  田中  石田

「冷や」 10   9   9   9   8

「常温」  8   6   7   6   7

「熱燗」  7   4   5   3   6

 理念的に全体平方和は以下のように分解する。

 全体平方和=要因1の主効果の平方和+要因2の主効果の平方和+交互作用の平方和+誤差の平方和(個人差の平方和+要因1に対する誤差の平方和+要因2に対する誤差の平方和+交互作用に対する誤差の平方和*) *・・・2要因の個人間計画では括弧内は一括して誤差の平方和として扱う

 まず、全体平方和を求める。

 全体平方和=14.67+8×2+3.35×2+0.69×8+0.03×7+1.37×4+4.71×5+10.05=16+6.7+5.52+0.21+5.48+23.55+10.05 =82.18

 要因1の主効果の平方和は、要因2の各水準をまとめて要因1の各水準の平均-全平均を二乗してそれぞれのサンプル数をかけたものを足し合わせて求める。このさい、次のような表を作っておくと便利である。    

条件  「冷や」 「常温」 「熱燗」 平均

安東水軍 5.6  6.4  8.2 6.73

剣菱   9.0  6.8  5.0 6.93

平均   7.3  6.6  6.6 6.83

要因1についての表

各被験者 AllMean Mean1   Mean2

加藤   7.5  6.67   8.33

井上   6.3  6.33   6.33

芝崎   6.5  6.00   7.00

田中   6.5  7.00   6.00

石田   7.3  7.67   7.00

 

要因2についての表

各被験者 AllMean Mean1 Mean2 Mean3 

加藤   7.5  7.5 7.0 8.0

井上   6.3  7.5 6.0 5.5

芝崎   6.5  6.5 6.5 6.5

田中   6.5  7.5 6.5 5.5

石田   7.3  7.5 7.0 7.5

 要因1(銘柄)の主効果の平方和は、  

 A1+A2=0.10二乗×15+0.10二乗×15    =0.30  

 同様にして要因2(冷やか常温か熱燗か)の主効果の平方和は、  

 B1+B2+B3=2.21+0.50+0.50      =3.21  

交互作用の平方和は上の表の全条件についてのセル平均-全平均の二乗和-要因1の主効果の平方和-要因2の主効果の平方和であるから、  

 A×B=7.56+0.92+9.38+23.54+0.00+16.74-0.30-3.21      =56.43  

 次いで誤差の平方和を求める。誤差の平方和は全データについてセル平均との差の二乗を求め、総和したものである。  

 誤差平方和=0.36+0.16+2.56+0.16+1.96        +0.16+0.16+0.16+0.36+0.36        +0.64+1.44+0.04+0.04+0.64        +1.00+0.00+0.00+0.00+1.00        +1.44+0.64+0.04+0.64+0.04        +4.00+1.00+0.00+4.00+1.00        =24.00 (小数点2桁以降丸め数値で計算しているため、全平均平方和≠要因1の主効果の平方和+要因2の主効果の平方和+交互作用の平方和+誤差平方和、と値が若干違っているが、お許し頂きたい)  

 誤差平方和の中身であるが、個人差の平方和・要因1に対する誤差の平方和・要因2に対する誤差の平方和・交互作用に対する誤差の平方和に分解できる。  個人差の平方和であるが、各被検者の平均と全平均との差の二乗をデータ数だけ掛け全被検者で総和すれば求められる。この場合だと、  

 個人差の平方和=(0.45+0.28+0.11+0.11+0.22)×6         =7.02  

 次いで、要因1に対する誤差の平方和を求める。まずは上表「要因1についての表」の各セルから全平均を引いて2乗する。そして個人差と要因1の主効果をそこから引いた値が要因1に対する誤差の平方和ということになる。すなわち、  

 要因1に対する誤差の平方和=0.09+0.75+2.07+0.09+2.12+6.75+0.75+0.09+2.07+0.09           =14.87-7.02-0.30 =7.55  

 同様にして要因2に対する誤差の平方和を求める。今度は個人差と要因2の主効果を「要因2についての表」の各セルから全平均を引いて2乗したものから減じる。  

 要因2に対する誤差の平方和=0.90+0.90+0.22+0.90+0.90+0.06+1.38+0.22+0.22+0.06+2.74+3.54+0.22+3.54+0.90 =16.7-7.02-3.21          =6.47  

 交互作用に対する誤差の平方和の求め方は誤差平方和から個人差の平方和と要因1に対する誤差の平方和と要因2に対する誤差の平方和を引けば求まる。よって、  交互作用に対する誤差の平方和=24.00-7.02-7.55-6.47          =2.96  

 ここまでで、求めるべき数値はすべて出揃った。分散分析表を作成してみよう。        ――――――――――――――――――――――――――――――――           要因  平方和 自由度  平均平方   F        ――――――――――――――――――――――――――――――――           個人差 7.02  4  1.76        ――――――――――――――――――――――――――――――――           要因1 0.30  1  0.30 0.16  

         S1誤差 7.55  4  1.89                                   ――――――――――――――――――――――――――――――――           要因2 3.21  2  1.61 1.99 

         S2誤差 6.47    8     0.81          ――――――――――――――――――――――――――――――――                                                                            交互作用          56.43 2 28.22 76.27

        その誤差  2.96  8  0.37              ――――――――――――――――――――――――――――――――           全体  82.18 29        ――――――――――――――――――――――――――――――――

 結果、要因1・2の主効果は有意差なし、交互作用が5%水準で有意となった。要するに酒の銘柄や温度それ単独ではその酒のおいしさは決まらず、いずれかの組み合わせ方が酒のおいしさを左右している、という結果が出たことを意味する。