大人の短編創作童話「行き過ぎた心身論」

 我々は誰かに殴られると痛みを感じる。体と心の問題と言うのは、そう言う経験則の範囲で十分なはずである。心と体という問題は例えれば海と泡沫(うたかた)のようなものである。  

 ところが、「科学」と言う因習にとらわれ過ぎたある国のひとびとが、「もっと殴ったら人間はどうなるか?」と言う疑問の虜になった。  

 そこで、そのひとびとはよその国のひとびとをさんざん殴り続けてしまった。  

 本当は誰にでも分かっていたのだ。ひとは耐えがたいまでに殴られ続けると頭蓋骨を骨折して死んでしまうことを。  

 いまでも「科学」と言う因習にとらわれ過ぎた国のひとびとは、結論が分かり切っているにもかかわらず、よその国のひとびとを殴り続けている。  

 もともとその国のひとびとは暮らしを豊かにするために科学を始めたはずが、そのせいでかえって心が貧しくなってしまった。  

 これは一体どういうことなのであろうか?

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