講座 心理学概論 9 発達心理学 13 発達の査定

 現在我が国では市町村など地方自治体に1歳6ヶ月検診および3歳児検診が法律で義務付けられており、医師及び自治体の心理士などにより実施されている。この検診では心身の健康状態及び発達状態を査定し、状況の如何によっては関係機関において適切な処置を施すことになっている。  

 純医療関係の話は病院の医師に譲るとして、ここでは主に心理学的な発達上の問題と検出のための査定について述べる。  

 我が国では2004年に「発達障害者支援法」が制定され、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義しているが、専ら発達心理学の専門家の間ではこれに知的障害を含めて考えることが多い。当然この中には脳性麻痺、ダウン症も含まれる。  

 もちろんこの定義から分かる通り、脳画像診断が発達した現代の医療では発見率は飛躍的に高まったが、多くの発達障害は治癒が極めて困難であるものが多く、長期にわたる支援を必要としている発達障害児は少なくなく、心理士だけで対応できるケースは稀である。心理士はコ・メディカル(医療協力)的な役割を担うことが多く、上記の法律で義務付けられた検診の他に、適宜発達検査を実施して、障害児の実情把握に努めることになっている。  

 発達検査では一般に、後の章で言及する知能における「知能指数」と同様に、平均児の指数が100になるように設計された、発達年齢を実年齢で除して100をかけた「発達指数(DQ)」が算出される。  

 検査は様々あり、そこで査定される項目は検査間で大きく異なる。発達心理学者として有名なゲゼルの発達に対する理論をもとに津守らが考案した「乳幼児精神発達診断法」では、乳幼児の発達を「運動、探索および操作、社会、食事および排泄など生活習慣、理解および言語」の5領域の発達状況を把握する検査となっている。  

 京都市児童院が開発した「新版K式発達検査2001」では、「姿勢-運動、認知-適応、言語-社会」の3領域が査定される。  

 以上のような検査においては健常児の発達査定に重点が置かれているのに対し、発達障害を検出するための「発達スクリーニング(濾選)検査」も我が国では多数用いられている。  

 一番有名なのはフランケンバーグとドッヅによる検査の日本版である「日本版デンバー発達スクリーニング検査」で、「対人、微細運動、言語、粗大運動」の4項目について発達の遅れを検出できるようになっている。  

 それと並んでよく用いられるのは「遠城寺式乳幼児分析的発達検査」で、「全運動、社会性、言語」の3大項目をその中の細分化された6領域についてスクリーニングできる。  

 以上2つの発達スクリーニング検査は、養育者などからの聴取項目が多く、主観に偏るので注意が必要である。  

 比較的客観的な発達スクリーニング検査には、「感覚運動、言語的認知能力、非言語的認知能力」をみる「日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査」がある。査定結果を子どもの処遇に活かす発達スクリーニング検査として「ポーテージ乳幼児教育プログラム」がある。  

 いずれの検査を施行するに当たっても、乳幼児がリラックスして検査に臨めるよう配慮が必要である。特に見知らぬ心理士が検査を施行するときには導入として時間をかけて子どもとのラポール(信頼)を築き、検査不能に陥らない技量が必要である。

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