今日では、さまざまな医学的アプローチによって、感情が扁桃体と前頭前皮質によって生み出され、その認識と表出には大脳右半球が主に関与することが分かっている。「感情を体験する」と言う文脈においては、右半球が「ネガティヴ感情」、すなわち不安や悲しみに強く関与しており、左半球が「ポジティヴ感情」、すなわち喜びや楽しみに強く関与している。もし、右半球に損傷のあるときには、ネガティヴ感情は抑制されて、ポジティヴ感情を持ちやすく、もし、左半球に損傷のあるときはポジティヴ感情が抑制されて、ネガティヴ感情を持ちやすいという医学的知見がある。
感情反応は、大脳皮質、扁桃体、海馬、視床下部などの中枢神経系と連絡のある自律神経系、特に交感神経系の活動と連動しており、瞳孔拡大、呼吸数上昇、心拍数と血圧の上昇、発汗、副腎皮質からのノルアドレナリン放出に見ることができる。これらの指標を用いて心理的動揺すなわち不安を犯罪捜査などのために調べる刑事的手法として有名なのが、いわゆる「ポリグラフ検査」である。この検査の対象者は、犯行事実とは関係のない「非裁決質問」の中に、犯行を行った者でしか知り得ない事実を盛り込んだ「裁決質問」を忍ばせて行うことによって、対象者がそれらの質問の反応間の差を検討することによって虚偽の供述をしているかどうかについて犯罪心理学の専門家に鑑別されるのである。
うつ病や強迫神経症の患者にはセロトニンの低下が見られ、これらの患者にはセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)のフルオキセチンが投与され、セロトニンの血中濃度を一定以下に下げないようにすることによって症状を緩和させる。これらの患者に対しては、セロトニンの生成に必要なトリプトファンの含まれた食事指導も行われている。
特に恐怖の感情体験に強く関与しているのは扁桃体であることが分かっている。扁桃体に損傷を持つラットは恐怖条件付けが成立しないことが実験的に確かめられている。不安障害に対してよくベンゾジアゼピン系の薬剤が投与されるが、扁桃体に対して抑制的に働く「GABA(ガンマ-アミノ酪酸)」によってその活動が沈静化されるためである。
報酬、特にその予期にかかわっている神経刺激物質にドーパミンがある。条件付けとドーパミンの分泌量を見た研究では、何度も条件刺激が提示されるたびドーパミンの分泌量は増加するが、そのような条件では報酬に対するドーパミンの分泌量は増大しない。恋でも遊びでも結果よりも過程に対して幸福感が強いという経験的事実や、学習途中で終わった学習の方が最後までやり遂げた学習よりも良く覚えやすいと言う「ツァイガルニク効果」は、このような研究結果と一致している。なお、ドーパミンの分泌過剰が統合失調症をはじめとするさまざまな精神疾患と関係しているらしいと言う仮説もあるが、さらなる研究が望まれるところとなっている。