講座 心理学概論 6 知覚心理学 8 文字定位

 「知覚」にはプレグナンツの法則が働くことは既に述べたが、文字のような複雑な記号をこれですべて説明できる訳ではない。ではどのようにして文字認識が成立しているのだろうか。  

 ここでは「特徴分析モデル」の代表格の「パンデモニアムモデル」と「分析総合モデル」の代表格である「記号対比モデル」について紹介する。  

 O.G.セルフリッジが1959年にコンピューターの大文字判定のために考案した理論である「パンデモニアム(伏魔殿)モデル」では、我々の心の中に4層のデーモン、すなわちイメージ・デーモン、特徴認識デーモン、認知デーモン、判定デーモンが働いていると仮定する。  

 まず、眼球から伝わってくるイメージをイメージ・デーモンが記録する。次に特徴認識デーモンがイメージの特徴、たとえば「A」と言う文字ならばてっぺんで合わさる2本の斜線と中央よりやや下寄りの横線1本からなる文字であると分析する。これを受け取った認知デーモンはどのような特徴が優勢かについて複数の叫び声を上げる。最も文字に近い叫び声が最も大きな叫び声を上げる。最後に、判定デーモンが最も叫び声の大きかったイメージ・デーモンをある文字として判定する。  

 この理論の問題点は、個人の個性を説明できないこと、果たして日本語のような文字数が膨大な文字の体系を逐一判定できるほどの範型を人間の頭は覚えていられるのかと言った疑問、それから次に説明する「文脈効果」を説明できないことなどである。    

 次の文字列を見て欲しい。  

 OBLIGATION   

 O37I962IO4  

 この文字列には「O」と「I」という記号が混じっているが、我々はこれを見たとき、「オブリゲーション」、「0371962104」と恐らく認識することであろう。つまり、前者では同じ刺激をアルファベットとして、後者では数字と認識するのである。このように同じ記号が前後の記号の配列で違った記号として認識される現象を「文脈効果」と言う。  

 これを説明するために考えられた理論を「記号対比モデル」と呼ぶ。我々はまず個々の文字を識別する。そして前後から最適解を導き出しているというのが、その要旨である。  

 いずれが正しいか、あるいはもっと適切なモデルがあるかの判断は、読者に委ねたい。

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