
上図は明るさの恒常性において最も有名な例である。黒地に灰色、白地に灰色の四角形を配すると、同じ明度の灰色の明るさが白地より黒地の方が明るく見える。
ハートライン(Hartline)は、カブトガニを使って興味深い実験をした。彼は、様々な強さ、様々な持続時間の光刺激をカブトガニに見えるようにして、反応を電気生理学的に記録した。
カブトガニの目というのは個眼が千個ほど集まってできている。個眼一つ一つについて電気生理学的な反応をとると言うことは、反応のグラデーションを知る上で必要不可欠なことである。
この実験の結果、様々な刺激で同じ明るさの刺激を見ているにもかかわらず、中央の視神経には6、側方の視神経には10の明るさがもたらされることが分かった。このため、側方の視神経の受容した明るさは、中央の視神経の受容する明るさを抑制すると考えられた。この現象のことを「側抑制」と呼ぶ。また、ある範囲では視神経反応の持続時間と強度の積は常に等しいことも分かった。これを「ブンセン・ロスコーの法則」と呼ぶ。
我々が同じ灰色を見ても、黒地の方が明るく感じられるのは、黒地の側抑制によって灰色の暗さが抑制されるためと考えられる。これは、ベツオルドの拡散効果と呼ばれている。