講座 心理学概論 6 知覚心理学 6 音源定位

 他人から話しかけられたとき、我々はすぐさま話しかけられた方向を特定できる。  

 このように、聴空間で耳に到達する音の発生源・方向を定位することを音源定位という。音源には音階上に位置づけられるハーモニーや純音である「楽音」と、不規則な音である「雑音」があるが、いずれも音高(ピッチ)を持つ点では共通である。  

 ここでは話を「楽音」に絞って進める。  モノラルのヘッドホンでひとつの音を聴くと、音像は頭の中央にあるように感じられる。左耳右耳の音の大きさを変えると、より強い音を聴かされた耳の方側に音像は偏る。  

 同様に、同じ音の強さだが右耳左耳で音の到達時間差を作ると、より速く音の到達した方の耳側に音像は偏る。  

 ここで問題である。  

 同じ音を右耳に速く弱く呈示し、左耳に遅く強く呈示すると、どのように聴こえるであろうか。  答えは「音はまた頭の中央に聴こえる」である。この現象を「時間と強度の交換作用(time-intensity trading)」と呼ぶ。  

 このことから推し量るに、正中面(頭を縦に分割する面)にある音源は定位できないように思われるかも知れない。  

 しかし、日常我々はそれで困ることはほとんどない。なぜであろうか。  

 これには「スペクトル分析」を我々の耳がしているのではないか、と言う説が有力視されている。「スペクトル分析」とは、我々の耳介の反射・回折・遮蔽によって真正面・真後ろ・真ん前・真後ろから来る音の微妙な聴こえ方の変化を我々の脳が分析しているのではないか、と言う考え方である。また、豊富な聴経験がかかわっているのかも知れない。この仮説なら、乳幼児を使って実験的に検証できる。  

 このため、我々の音源定位は、人工的に操作された聴空間でない限り、極めて正確になされる仕組みとなっている。  

 最後に「カクテルパーティー効果」に触れておく。やかましい中でも自分の名前が呼ばれたのを聞き取ることができるとか、親しい友人と会話できるなどの現象を「カクテルパーティー効果」と言う。神経生理的には上オリーブ複合体と蝸牛の間にはオリーブ蝸牛束があって、それがこの効果を可能にしている、という議論もある。

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