講座 心理学概論 6 知覚心理学 2 プレグナンツの法則

 我々は、雑然とした部屋に探し物にはいるとき、容易に探し物を見つけることができる。  

 どうしてなのであろうか。  

 それは探し物が「目立つ」ためではないだろうか。「期待」は探し物を見つけるときに大きな役割を果たす。空気の中の塵ひとつを探すより、有名作家の小説を探す方が、より容易であろう。それは有名作家の小説の方が「単位」として認識しやすいためである。このような知覚的分節のことを「ゲシュタルト(パターンないし全体を意味するドイツ語)」という。19世紀初頭にヴェルトハイマー、コフカ、ケーラーなどによって前面に出てきたこの「ゲシュタルト」と言う概念は、一大心理学勢力となり、彼らは「ゲシュタルト心理学者」として認知されることとなった。  

 「部分の総和は全体と異なる」という彼らの主張は、一音一音とメロディーの関係を例に出すまでもなく、我々の環境認識にかんする考え方に一大センセーションを巻き起こした。  

 その中でも今節では「プレグナンツ(簡潔性)の法則」を紹介する。  

 ものがまとまって見える現象を「群化」と呼ぶが、その中で特に重要なのが「近接」「類同」「連続」である。  近接から説明する。       

 「・・・・・・・・」はただの「・」の連続に過ぎないが、「・・ ・・ ・・ ・・」としたらどうであろうか。「・・」がひとまとまりに見えるであろう。  類同とは、×を多数並べて「X」という文字を作りそのまわりをびっしりと「+」で埋めても、「X」とハッキリ判読できることである。  連続とは、「T」のように縦線と横線がある場合に縦線・横線がそれぞれに独立して認識できるように、「連続した刺激はまとまりやすい」ことである。  

 この他にも「閉合」とか「良い形の要因」とかあるが、ここでは割愛する。  

 これらの要因が我々に認識世界の安定性を与えているのは確かであろう。このように我々の知覚は単なる感覚の寄せ集めではなく、「知覚的推論」という脳の過程によって処理された情報構築作業を無意識のうちに行っているのである。これは盲人が開眼手術を受けた直後でも示される事象であるため、先天的に備わった能力であることが証明されている。

 ただし、これだけで知覚のすべてを説明できる訳ではない。情報として目立つ部分のことを「図」、背景になる部分のことを「地」と呼ぶことは先述したが、「図」が何であるかを規定する要因は他にもあり、これについては後述することとしよう。

 筆者なりに「プレグナンツの法則」を翻訳的に理解すると、それは「人間の知覚は情報量を節約(小さく)するようにできている」と言った感じであろうか。それはあまねき人間の知覚に言えようかと思う。

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