これまでは背後(母集団)に2項分布や正規分布を仮定できる場合の検定法を紹介した。これらはパラメトリック検定と呼ばれる。しかし心理学のデータにはそれが仮定できないものがある。それらの検定をノンパラメトリック検定と言う。
すでに紹介したχ2検定は、母集団に特定の仮定を置いているから、パラメトリック検定である。これとは違ってノンパラメトリック検定としては符号検定、順位和検定(ズレの検定)、順位相関係数などがある。以下それぞれぞれについて述べる。
符号和検定では、各変数から中央値の期待値を引き、それらの符号を書き並べる。たとえば恋人への好意度が10点満点で、過去の充分大きなサンプルサイズの既知の中央値が6.5だったとする。 新しいデータ15人分が、
7 8 8 7 9 6 7 8 7 6 7 3 8 9 7 だったとすると、符号は
+ + + + + - + + + - + - + + + となる。2項分布の公式
n n!
( ) = ―――――――― ―――
x x!(n-x)!
からn=15、p=0.5として
p(0+1+2+3) = .017
よって、5%水準で新しいデータの中央値の方が高い、と言える。
次に順位和検定であるが、ある心理テストの「神経質さ」の得点が50点満点で、心理療法を受けた群(n=10;Tと表記)と、受けていない群(n=10)で以下の成績を示したとする。
心理療法あり(T) 25 21 30 31 28 25 30 29 25 20
心理療法なし(R) 37 29 25 36 42 38 28 35 40 36
これを値の小さいものから並べる。なお「心理療法あり群」には(T)を添えてある。
20(T) 21(T) 25 25(T) 25(T) 25(T) 28 28(T) 29 29(T) 30(T) 30(T) 31(T) 35 36 36 37 38 40 42
これらの値を順位に置き換える。
1(T) 2(T) 3(T) 3(T) 3(T) 3 7(T) 7 9(T) 9 11(T) 11(T) 13(T) 14 15 15 17 18 19 20
検定統計量R=((T)の値の総和)=1+2+3+3+3+7+9+11+11+13 =63
Rの0.026の臨界値は79以下、よって「心理療法あり群」は5%水準で有意に「神経質さ」の得点が低い。順位和検定についてはこれで述べた。
さらに、順位相関係数では次のような問題を扱う。 数学と理科のテストで以下のような順位がついたとする。
数学 5 8 6 1 9 4 7 2 10 3
理科 4 9 7 1 10 5 8 3 6 2
この場合の順位相関係数は次式で与えられる。
(Xi-Yi)の二乗の総和
r=1-(――――――――――――――― × 6)
n(n二乗-1)
この場合(Xi-Yi)の二乗の総和は24なので
r=1-((24×6)/800) =1-0.18 =0.82 と高い相関があることが分かる。
ノンパラメトリック検定の代表例3つについて述べた。