これまで見てきた心理学的統計検定の本質を要約すると、心理統計とは「変数の共変性の確認」だと言うことができる。 他の基礎的な心理統計の方法についてこの後は概説してゆくこととする。
「因子分析」とは、比較的少数の「因子」を数理的に共通のモーメント(重心の推定値)を抽出して、相関を分析する手法のことを言う。因子間行列から分散を最大にし、現象をよく説明する因子を抽出するのである。そのために各変数に最適な重み付けを与える。この重み付け係数のことを「因子負荷量」という。イメージして欲しいのが、分布が30点から100点までのテストと、分布が90点から100点までのテストを何も考えず単純に加算して「学力テスト」と銘をうつ誤りである。近年までは因子間に相関を認めない「バリマックス回転」という手法を用いて「直交解」を求めるのが主流であったが、最近ではある程度の因子間相関を認める「プロマックス回転」を用いて「斜交解」を求めるのが主流になっている。これらは共分散行列から計算される。心理学では質問紙検査を作成したり、イメージを分析したりすることに用いられることが多い。因子数であるが、1以上の固有値をスクリー基準によって決定する。因子分析には「探索的因子分析」と「確認的因子分析」がある。「探索的因子分析」では分析のはじめに最小二乗法や最尤法で初期解を求め解釈をし、2因子以上の解は各観測変数がができるだけ小数の因子から影響を受けている単純構造を探すため回転をする。「確認的因子分析」では、自由母数・制約母数・固定母数を指定し、因子間行列を求めることができるので、特定の理論的背景があるときには確認的因子行列をもちいる。これらは統計ソフトSASやSPSSなどで容易に求められる。
心理学で意味やイメージを研究する方法としてはオズグッドによるセマンティック・ディファレンシャル(=SD;意味微分)法が有名である。たとえば「怒り」という概念に、一対の反対の意味を持つ形容詞、たとえば「優しい-厳しい」、「良い-悪い」、「愛がある-愛がない」など10~20対の形容詞を7段階尺度で評定してもらい、因子分析を施して各尺度上の点を結びつけることでイメージ空間にプロフィールを作れるようにしたりする研究などがある。基本的に「評価」・「活動性」・「力量」からなる3次元意味空間に意味を定位することができる。が、研究によってはかなり違う次元を抽出することもある。