人間の体内のブドウ糖や脂肪が不足すると、肝臓から迷走神経を経由して脳内視床下部外側野の摂食中枢に達し摂食誘発物質であるオレキシン・メラニン凝集ホルモンを分泌して摂食行動へと生体を導く。視床下部腹内側部は各臓器から送られてくる信号によって摂食を終わらせている部位だと考えられてきたが必ずしもそうではないらしい。摂食の促進を抑制するホルモンとして、脂肪から分泌されるレプチンがあり、このような働きをする脳内ホルモンが複数見つかっている。
発汗や呼吸などで、また塩分の多い食事を取ったりで、細胞外液の浸透圧が高まると、水は細胞外に滲出する。これを感知する受容器が脳室周囲器官の終板器官を中心として存在し、信号を視床下部前方に送る。また、嘔吐や下痢などで体液量を減少させ腎臓からのレニン分泌を引き起こし、血中のアンギオテンシンⅡ量を増加させ、脳弓下器官ニューロンが活性化することで信号が視床下部前方に送られる。視床下部前方に収束する水分欠乏情報が視床下部外側野等を活性化させ水分摂取を促進する。生理学的にはこのようにして水分調節が行われている。
また、性欲は下垂体前葉から出るゴナドトロピンに刺激され性腺からの男性ならばテストステロン、女性ならばエストラジオールの分泌を刺激し、視床下部へ下垂体ホルモン刺激ホルモンの分泌を抑制するネガティヴフィードバックという構造にその生理学的基礎を持っている。。
このように、摂食と水分調節をはじめとする一次的欲求は、ほとんどが視床下部に由来する。また、人間の一次的欲求はこのような脳の働きだけではなく、習俗や文化に依存する面が大きい。