講座 心理学概論 1 神経心理学 6 覚醒と睡眠の大脳生理学

 睡眠は中脳網様体と視床下部の活動の表現系である。前者の脱同期化と後者の同期化の結果として睡眠がコントロールされているのである。中脳網様体が興奮すれば覚醒が、視床下部などによる入力によって中脳網様体が抑制されれば睡眠がもたらされる。覚醒をもたらす経路を上行性網様賦活系と呼び、睡眠をもたらす経路を延髄抑制系と呼ぶ。  

 睡眠は神経機構そのものでは説明できない現象である。しかし概日リズムが見られるなどのことから、覚醒中の脳内ホルモンの蓄積が可能性として考えられてきた。すなわち、脳内にも独自のホルモン系があり、神経細胞を修飾し、その結果眠りがもたらされるのではないか、というのである。辺縁系諸核の細胞の中に、セロトニン・ソマトスタチン・メラトニンが存在し、その活動の結果、細胞が修飾的に影響を受け、睡眠と覚醒のリズムが成立するらしいことまでは分かっている。  

 さらに、覚醒を維持するオレキシンと言う物質の受容体をオレキシンブロックの状態にすると良質の睡眠が促進されることも近年判明した。  

 クライトマンの睡眠の分類(レクトシャッフェンの分類もこれと類似)では、ステージ1「入眠期」・・・α波消失/低振幅θ波出現、ステージ2「意識消失期」・・・紡錘波・K複合波出現、ステージ3「中等度睡眠期」・・・δ波が20%程度出現、ステージ4「深睡眠期」・・・δ波50%以上、ステージREM・・・覚醒期と似た脳波を示すが体は眠っている(そのためこれを逆説睡眠ともいう)、の5段階に分けることができる。  

 なお、クライトマンの睡眠実験協力者であるデメントは、ステージREMにおいて頻発する「夢」の体験時間は、現実の体験時間と一致することを見出している。

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