統合失調症根治薬の展望

 

 今日お話させていただきたいのは、「統合失調症になぜ根治薬がないのか」についてです。  

 心理学におきましても精神医学におきましても、統合失調症の本質的病態は「ドーパミン系の障害」だと見られるのが一般的です。  

 しかし、僕が雪隠詰めで考え詰めた結果、統合失調症の本質的病態は、一般的に遊びにかかわる脳機能の不全(腹側淡蒼球の代謝異常)ではないかというのが僕の結論です。つまり、この意味において統合失調症はヤスパースの言うような「了解不能の精神疾患」ではなくなった、と言うことです。  

 ユングの「夢」論などにもあるように、統合失調症の病態的本質は「意識閾の低さ」、つまり「覚醒水準の高まり過ぎ」にあると思います。大きなところで原因を考えると、副交感神経系の失調がそれに当たると思います。不眠などの症状が随伴するのはこのためでしょう。これらの病態の表現は、違法薬物を摂取したときに現れる症状と同様であり、ただ薬理的に作り出されるか以下に述べるような病理的機序なのかだけの違いだと思います。  

 そのひとつのヒントとして我々は、統合失調症患者における視床網様核におけるPPI(プレパルス・インヒビション=信号前抑制)の低下を挙げることができます。そこから考えると、PPIの低下を腹側淡蒼球の機能不全によってもたらされるものと予測できます。 

 それが本当だとして、暇な読者のみなさんにはこの観点から統合失調症の根治薬の可能性についてお考えいただきたく望む所存です。

 これは特に妄想型の統合失調症に言えるかも知れないことですが、あるいは、脳内の現実認識と目標の統合を担う腹側淡蒼球にGABAの抑制入力とグルタミン酸出力のバランスを回復する薬物を投与すると良いのかも知れません。

 純心理学なアプローチも見えてきました。統合失調症の精神性の本質をひと言で言えば、「アナザーパイロット症候群(Another Pilot Syndrome:APS/人格内異操縦士症候群)」、言い換えれば「精神の二重性」であり、この二重性の主との内面的関係性をクラッシュさせてしまえば統合失調症は治ります。もし大胆な仮説を許されるならば、「大腸-心相関」の失調(たとえば批判耐性の弱さ)、つまり特定の自律神経系(大腸水分調節系)の失調も考えられます。その失調を回復できるのなら、統合失調症治療につながるものと期待します。

 実を申しますと、僕の親戚には札幌で医者をしておられる2名の女医さんがおります。  

 そして僕の姪がいま大学の薬学部の5年生をしておりまして、時折会いますが、僕から見ると「まだまだだなぁ」と感じることがあります。僕もいくつかの学会所属の心理士なので、生理学的に考えないことがないわけではありません。  

 彼女の薬剤師としての成長を切に望んでいます。

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